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熟年離婚の年金分割について

2007年よりスタートした『年金分割制度』。この制度は離婚後夫の年金を分割し妻が受け取れるようになることから、一時「熟年離婚が増えるのでは?」と話題になったのでなりました。

実際、女性のもらえる年金額は少なく、共働きだったとしても出産や子育てなどの理由で保険料を納めている期間も短く、男性に比べて女性の方が収入は少ないので、支払っている年金保険料も少ないためです。会社員の妻で専業主婦であれば、保険料を支払うことなく国民年金(基礎年金)に加入していることになり、妻の名義で年金を受け取ることができますが、20歳から40年間加入していたとしても年間約78万円。これでは老後の生活が成り立ちません。

熟年離婚となると、お金の面で妻の方が圧倒的に不利なのです。

妻にうれしい離婚時の「年金分割制度」

そこで2007年に誕生したのが「年金分割制度」。離婚をするときに夫婦間で厚生年金部分を分ける仕組み。結婚期間中の厚生年金部分は、夫婦が協力して保険料を支払っていたといえるので、離婚するならその部分の年金は夫と妻で分けるべきということです。

老後の年金は、国民年金が1階部分で、上乗せされる厚生年金や共済年金が2階部分です。国民年金は、会社員であろうと主婦であろうとすべの人が加入している公的年金の土台部分。国民年金は、専業主婦であっても自分の名義でもらえる年金です。

年金の仕組みについて詳しくはこちら

ですので、離婚時に分割となる年金は厚生年金や共済年金の部分のみとなります。夫婦それぞれの厚生年金(共済年金)部分を合算して、最大で半分ずつに分ける仕組みなのです。妻が結婚後こどもが産まれるまで働いていて、社会保険料を払っていたなら、その部分も対象になります。

注意したいのは、分割の対象は結婚している間の厚生(共済)年金部分のみで、夫婦とも独身時代に働いた期間は年金分割の対象外だということ。

また、離婚時の年金分割制度は2通りあります。

離婚時の年金分割制度は2種類

分割の対象は厚生年金部分であるため、結婚期間中に夫・妻のいずれかが厚生年金に加入していたことがある夫婦が対象です。国民年金のみに加入している夫婦(自営業者など)は対象外となります。厚生年金基金など勤め先独自の企業年金も対象外です。また、年金分割の手続きの期限は離婚後2年なのでご注意ください。

1.合意分割制度
2007年(平成19年)4月以降に離婚をして、夫婦の間で合意があったときに厚生年金部分の年金額を分割することができます。
熟年離婚となるとよっぽどの事情があるはずです。話し合い自体が難しい場合や、分割の割合がまとまらないことの方が多いでしょう。その場合は、妻か夫のどちらか一方の申し立てにより、家庭裁判所が分割割合を定めることになります。
また「合意分割制度」の場合は、結婚期間中のすべての厚生年金記録が対象です。
2.第3号分割制度
2008年(平成20年)4月以降に離婚をして、配偶者の一方が専業主婦(夫)など「第3号被保険者」である場合に適用される年金分割制度です。「合意分割制度」と違うのは両社の合意は必要ないということ。熟年離婚した専業主婦の妻が請求した場合は、夫の同意なく2分の1の割合に分割されます。
ただし、第3号分割制度の年金分割は、2008年4月以降に納付した保険料のみが対象。例えば2015年に熟年離婚しても、自動的に分割できるのは7年分だけということになります。

内縁の妻でも年金分割は可能

正式に結婚していない(事実婚)妻でも、熟年離婚で年金分割の申請ができます。ただし、一緒に暮らしているだけでは認められず、事実上の夫婦として暮らしていたことの証明や、厚生年金の第3号被保険者として申請しておかなければなりません。いくつかの要件を満たす必要があるので、年金事務所などにご確認ください。

熟年離婚でもらえない年金がある

ここまで厚生年金(老齢厚生年金)部分の年金分割についてみてきましたが、熟年離婚することでもらえなくなる年金額が結構大きいのはご存じでしょうか?

年金は個人単位のものですが、給料の扶養手当にあたる年金もあります。『加給年金』という65歳未満の配偶者と高校生未満のこどもを持つ人がもらえる年金です。『加給年金』は夫が年金の受給がはじまる65歳になると受給される年金で、妻が65歳になるまでもらえます。妻が5歳年下なら5年、10歳年下なら10年間受給でき、2014年3月までの試算で年間約39万円。(夫が1943年4月2日以降の産まれ)もちろん熟年離婚した夫婦はもらえません。

また通常、夫婦の場合夫が先に亡くなると『遺族年金』を受け取ることができます。もらえる年金額は、夫の厚生年金部分(厚生老齢年金)のだいたい4分の3。

男性に比べて女性の方が5~10年長生きするので、夫が先に亡くなる確率の方が断然高いのですが、熟年離婚によってこれらの年金の受取りができなくなります。

確かに熟年離婚する妻にとって、年金分割はありがたい制度です。しかし、分割される年金額やその他もらえなくなる年金を考えると、老後資金の損失はかなり大きいといえます。

年金分割でもらえる年金額の計算は

それでも熟年離婚をしたいなら、分割後のもらえる年金額を計算しておかなければなりません。おひとりの老後生活の資金計画のためには、もらえる年金額を知っておくことは重要です。

自分で年金分割の金額を計算するのはかなり難しいですが、年金事務所などに申請すれば「年金分割のための情報通知書」を無料で発行してくれます。(共済年金の場合は共済組合)50歳以上であれば、具体的な年金額の目安を試算してくれます。相手に内緒で申請することも可能です。

夫婦で申請した場合は、それぞれに対して「年金分割のための情報通知書」が発行されます。夫婦どちらかが申請した場合は、申請した方にのみ「年金分割のための情報通知書」が発行されます。おおむね2~3週間かかりますが、送付先を指定することも可能です。

熟年離婚は慎重に

20~30年連れ添った夫婦なのに熟年離婚を考えている訳ですから、よっぽどの事情があるとは思います。ただ、離婚して自分の新たな人生を歩むためにも最低限のお金は必要です。離婚後の年金分割の金額を確認し、必ず老後のマネープランを試算した上で決断してください。

勢いで熟年離婚して、分割でもらえる年金が思ったよりも少なくその後の生活が成り立たなければ、取り返しがつきません。専業主婦だった妻にとっての熟年離婚は、経済的なデメリットが想像以上に大きいものです。

熟年離婚は、再婚しなければ、いわば二重生活の状態ですから、夫側ももらえる年金が少なくなり、どちらにとっても厳しいセカンドライフになるでしょう。現実的には、離婚せずに一定期間別居したり、家庭内別居という選択肢もあります。

以下記事でも「熟年離婚にかかるお金」に関する情報を掲載していますのでご一読ください。

熟年離婚にかかるお金│老後資金の5大リスク

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