少子高齢化の日本では社会保障制度の維持が大問題で、「年金受給の引き上げ」や、「改正高年齢者雇用安定法」により、60歳以降も働き続ける社会になりつつあります。政府も『人生90年時代』を前提に、就労支援や起業の際の資金調達支援などにより高齢者の就業率アップを目指しています。
人生90年なら、60歳でリタイアすると老後は30年もの長い年月になります。その間健康に生活できる期間は10~15年ですから、老後生活の安定のためにも60歳以降も働けるならできるだけ長く働くのがおすすめです。
60歳以降の働き方の選択肢
では、60歳以降も働き続ける場合にはどんな選択肢があるのでしょうか?
それまでの仕事をそのまま続ける
現在の会社の定年制度が60歳以上の場合は、そのまま今の仕事を続けるのが金銭的にも精神的な負担もなく、一番良い選択肢といえます。定年を70歳まで引き上げていたり、定年制度を廃止している会社にお勤めの場合は、体力が続く限り働くことができるのでとても恵まれたケースです。自営業者の方も同様に、ご自身の健康と相談しながら働くことができます。
定年退職が60歳の会社にお勤めの場合も、「改正高年齢者雇用安定法」により原則としてすべての企業は、65歳までは希望するすべての従業員の雇用を確保することが義務付けられ、60歳以降も働けること可能となりました。
定年を65歳未満としている企業は、以下のどれかを選択
- 定年を65歳までに延長する
- 定年制度を廃止する
- 65歳までの継続雇用制度を導入する
- 【勤務延長制度】従業員を退職させずにそのまま雇用する
- 【再雇用制度】従業員に一度退職してもらい改めて雇用する
ただしほとんどの企業は、『再雇用制度』を採用しています。定年制度を廃止もしくは延長している会社は、ある調査によれば全体の2割ほどというデータもあります。現在『改正高年齢者雇用安定法』により65歳まで雇用を義務付けられたとはいえ、企業は人件費の負担を少なくできる『再雇用制度』で対応しているのです。
また定年後の再雇用は新たに雇用契約を結ぶことになるので、定年前とは異なる労働条件となる場合が多く、収入も定年時の40%~70%になるのが一般的です。しかも、希望者全員が再雇用されるわけではなく、再雇用されたとしても雇用期間が1年単位になるなど注意が必要です。
定年後に独立する
いったん今の会社を60歳でリタイアし、第二の人生として独立にチャレンジするという選択もあります。ただし60歳を過ぎてから、現役時代とは異なる業界・業種で独立というのは現実的ではありません。現役時代のキャリアを活かして独立することができたら一番スムーズでしょう。
例えば、金融関係で働いている人はファイナンシャルプランナー(FP)や税理士の資格を取り独立したり、人事や労務に関わってきた方なら、社会保険労務士、司法書士の資格を取り独立する道があります。
資格を取っても仕事があるとは限らない
ただし注意したいのが、専門的な資格を取得したからといって、現実に十分なお金を稼ぐのは難しいということ。資格によっては有資格者が多く市場が飽和状態の場合があります。資格取得の難易度が高ければ高いほどその分仕事になるチャンスもあるのですが、定年後に勉強をし始めても間に合いません。50代のうちから仕事と両立しながら資格取得の勉強をする難しさもあります。
また独立に至らなくても、定年後の再就職に有利に働く資格もあります。「時間をかけて資格を取っても仕事がない」なんてことがないように実情を調べてから挑みましょう。
定年後に取得できる資格の種類
取得できる資格は、いろいろありますが一例として以下のようなものがあります。
- 公認会計士(財務関連の経験のある方)
- 税理士(会計や経理の知識や経験がある方)
- 社会保険労務士(人事、総務の経験のある方)
- 中小企業診断士(経営に携わった経験の方)
- 行政書士(独立に適した資格)
- ファイナンシャルプランナー(お金の専門家)
- マンション管理士(独立にも向いています)
- ビル管理技術者(老後長く働けます)
- 介護事務(介護に関心のある方)
- 介護福祉士(今後介護の需要は高い)
生涯学習のユーキャン
のんびり働く
いったん60歳でリタイアし、第二の人生としてこれまでとは異なる仕事に就くというパターンです。
シルバー人材センターの活用
臨時や短期の仕事ならば、シルバー人材センターに登録してみてください。シルバー人材センターは市町村レベルで網羅され、「社団法人シルバー人材センター事業協会」がとりまとめています。
公園や家庭内清掃、農作業、交通安全指導員、育児代行、福祉関連の仕事など、さまざまな仕事があります。これらは長期的な雇用ではないので、空き時間を利用したり、地域に貢献したりしたいという希望がある方に向いています。
報酬は、月に8~10日程度の就業で、月額3~5万円ほど。ちょっとしたお小遣い、最低限の生活費の補てんにはなりそうです。
ご自身の興味をもとに、どんな資格や仕事があるのか探してみてください。どれだけお金を稼ぎたいのか、そしてどんなやりがいや楽しみを求めるかで、自ずと選択性が絞られてくるはずです。どんなパターンで働き続けるにせよ、毎月一定の収入があるのは、思った以上にキャッシュフローに与える影響が大きいものです。
「年金だけでなんとかやりくりしよう」と無理して節約などのやりくりをするくらいなら、ペースを落としてでも何かしら働いた方が、家計も気持ちも楽になるかもしれません。